啓発普及部のグラゼンです。
アジアでは『間伐』という考え方はあまりありません。法律で禁止されているのがほとんどです。
1月25日から27日に、今後の私の仕事ため、そして間伐の重要性を十分に把握するために、「海岸林再生プロジェクト」が進む宮城県名取市へ出張しました。たくさんの学びを得ることができ、今までの名取出張の中で一番意味がある出張だったと感じました。以下にその理由をまとめてみました。
1.これまで、「海岸林再生プロジェクト」の英語の申請書や報告書は私がまとめていたため、間伐については、名取事務所の佐々木統括や吉田担当部長にインタビューして、ある程度理解していました。それでも今回は現場に行って、実際のやり方を見て、自分の肌で感じて、間伐をもっと深く理解したいと思いました。
■佐々木統括がおっしゃるには、間伐は早めに行う方が、費用対効果が高いそうです。クロマツの木が若いうちに伐採し、処分するほうが簡単で安くすみます。
■間伐前はクロマツが密集しているため、林業のプロは現場管理の時に大変苦労します。間伐後は、十分なスペースができて、林業従事者が快適に移動できて、負担が少なくなります。長期的には、現場の管理にかかる費用の削減にもつながります。一方、外来種のツル性雑草の防除も楽になります。ツルはクロマツの一番上までに行くと、木の成長を阻害し、木から日光を奪って枯死させると聞いています。
※日本の森林率は67%ですが、私の国(フィリピン)は22%しかありません。森林再生プロジェクト以外では、フィリピン政府は残りの森林を保護するために “total log ban”の法律があるため、木を切ることができません。 そして、残念なことに、森林再生プロジェクトで植林した山はほとんど手入れや間伐がされていません。フィリピンでは、間伐という概念は一般的ではなく、ほとんど耳にしません。間伐は、植林した木が台風に耐えたときに自然に行われることがほとんどです。
2.プロの森林組合の方々と実際に一緒に作業し、しっかり話をしたのは初めてでした。彼らの存在が、私たちのプロジェクトが円滑に進む理由の一つであることは、常に意識しています。間伐作業の様子や、切った木を運び、どこかに積み上げる姿は、私のような素人でも「真剣にやっているんだなぁ」と感じます。また、間伐の際に誤って木を切ってしまった時の「反省」の様子からも、良い結果を出そうとする姿勢がうかがえます。東京に向かう途中で、彼らがヒマラヤのシェルパのような存在で、名取プロジェクトの “unsung heroes”だと感じました。
3.日本人は安全に厳しいと良く言われます。現場に着いたとたんに一番目についたのは、「間伐作業中」の垂れ幕と、その隅に置かれた薬箱でした。プロ林業のプロは全員ヘルメット(名前と血液型が書いてあります)をかぶらなければなりません。日本以外のオイスカプロジェクトでは、地元の人はヘルメットも長靴も着用していません。ほとんどの場合、スリッパで作業しています。
林業のプロは、その後の林内の安全のため、地上数センチの高さで木を切ります。砂でチェーンソーを傷つけても、安全のためなら道具を犠牲にします。必要なときに研げばいいのです。
4.私は野生動物が大好きで、旅行先では高級レストランで食事をするよりも、エコツアーに参加して自然の中で動物たちを見る方が好きです。ですから出張して最初の日に、吉田部長から「動物の様子を見ることができるよ」と聞いて嬉しかったです。もし、フクロウに会えたら、宝くじに当たったような気持ちになるでしょう。知床の野性動物の写真を撮るために頑張っている知人にも ”自慢“出来ます。でも残念ながら、今回はフクロウに出会えませんでした。間伐のチェーンソーの音で動物たちが驚かしたかもしれません。それでも、次の日にキジのオスを見て、大満足でした。
次回の名取出張が楽しみです。次は、「バンシャク以外に孫娘の顔を見るのが一番の幸せだ」と言っていたプロの林業マンに再会できることが楽しみです。