ウズベキスタン沙漠化防止プロジェクト

場所
ウズベキスタン・カラカルパクスタン共和国他
活動開始年
2014年
受入機関
カラカルパクスタン共和国林業局・カラカルパクスタン農業大学

内モンゴル沙漠緑化の経験を活かして

 ウズベキスタンのカラカルパクスタンに位置するアラル海周辺は、世界で最も急速に沙漠化が進んでいる地域といわれ、湖底面積が既に500万ha、距離にして流入口から200㎞も干上がってしまいました。原因は、過剰な綿花栽培のための灌漑があげられますが、気候変動に起因する異常な高温(摂氏60度)になる年が増えていることも砂漠化に寄与しています。湖底から舞い上がる塩化物や砂は、年間1億トンに及び、地域住民に深刻な血液疾患を引き起こしています。

 現地政府もかつて、サクサウール(ソウソウ)という灌木の植林を実施しましたが、最近は財政難等から緑化はほとんど実施できていません。また、植林しても木々が薪に使われるなどしており、根本的な解決には程遠い状態で、沙漠化防止のための植林が同時に住民の生計向上にも寄与するような持続可能な対策が望まれています。

 さて、ウズベキスタンはオイスカが長年活動してきた中国内モンゴルとほぼ緯度も同じで、砂漠化の進んでいる国。植生も似ていることから、内モンゴルの活動の経験を活かせると冨樫智専門家が2014年にウズベキスタンに出向き調査を実施。そして同国で砂漠化問題に取り組もうとしていたタシケント農業大学ヌクス分校(2021年9月よりカラカルパクスタン農業大学に名称変更)から強い要請を受けプロジェクトをスタートさせました。

住民の生計向上もあわせ、アラル海を緑の海に

 沙漠化を防ぐためには、現地住民の生計向上と連動した緑化が肝要です。塩分濃度の高い厳しい環境である同地域に育つ樹種は、ほぼサクサウール(ソウソウ)やセルキスのみです。

 まずは、サクサウールの木の根に寄生する、漢方薬の原料となる植物、ニクジュヨウと連動して植林・栽培するモデル林を作り、同国政府機関、住民、国際機関等へこのモデル事業を普及の足掛かりをつけることをプロジェクトの目的に据えています。

 指導にあたる冨樫智氏(農学博士)は、ニクジュヨウの新しい人工寄生手法を開発、中国内モンゴルで研究・実践してきましたが既に、内モンゴルにおいては住民にこの技術が普及し、持続可能な砂漠緑化を実現しています。そこで次なる挑戦として、冨樫氏は気象条件が似たウズベキスタンにてニクジュヨウ栽培とソウソウの植林を主体に沙漠緑化を行っています。

近況・今後の方針

 カラカルパクスタン共和国のアラル海試験植栽地の使用許可を得てモデル林を形成すべく取り組んでいます。当面は、サクサウール10ヘクタールの造成、そしてニクジュヨウの人工寄生を行う予定です。

 従来の方法では大量寄生に限度があるため、トラクターとポンプを用いた機械化による寄生方法を検討しています。コロナ禍で現地へ赴くことがなかなかできていませんが、両国のコロナ禍がひと段落した期間を狙って出張し活動を進めていきます。

 また、カラカルパクスタン農業大学の職員を訪日研修生として日本の西日本研修センターに派遣し、研修を終えたのちプロジェクトのコーディネーターとして活動してもらう計画もあります。