KPD/オイスカ青年研修センター

場所
東マレーシア・サバ州
活動開始年
1989年6月
受入機関
KPD(サバ農村開発公社)

第一次産業を担う勤勉な青少年の育成を目指して

 センター開設当時、サバ州はマラヤ連邦と統合、マレーシアとして独立して十数年が経過しただけの、まだ若い国でした。経済的には、南洋材や原油・天然ガスなどの輸出が好調で、農業面ではゴム・カカオ・油椰子などの換金作物も国際市場価格の変動に影響されながらも大資本によるプランテーション農業が行われ、表面的には繁栄を享受していました。一方、現地の若者は第一次産業を嫌い、多くは外国労働者に依存。その結果、貴重な労働力が遊んでいる一方、農村では常に労働力が不足している状況がありました。

 将来、木材などの資源が枯渇し、これまでの経済構造の転換が不可避となった場合を考えると、農業の近代化と勤勉な青少年の育成が急務であるという観点から、当時のサバ州農業水産大臣からオイスカに要請が入りました。

 水稲・陸稲などの一般的で伝統的な小農業が大半で、豊かな自然と気候条件を生かし、栽培や管理技術と共に額に汗して働く勤勉な青年リーダーを育成しようと研修センターが開設されました。

 オイスカは、1970年代からマレーシア・サバ州で地道に農業を通した人材育成を行ってきました。しかし、若者の農業離れは止まらず、農村の活性化にはほど遠い実状に、内心忸怩たる思いを抱いていました。そこで、99年からはさらに食品加工に力を入れています。その目的は、自分たちの収穫した農産物に付加価値をつけて販売し、収入の増加を図ることで農業を盛んにすることです。

技術だけでなく自主性と規律を重視した研修を

 本研修センターは、マレーシアのサバ州政府の一機関である農村開発公社(KPD)をカウンターパートとしており、稲作、野菜栽培、食品加工、畜産などの研修を行っています。日本人の技術員、調整員は一名もおらず、日本での研修を修了した研修生OBの主導により、自主性と規律を重視した研修を続けています。

 現在では、食品加工の技術の指導を研修センター内のみならず周辺住民へと広げており、サバ州の農業振興につなげることを期待しています。研修生の評価については、年3回の筆記試験や野外での実地試験などを、厳しい基準に基づき実施。徹底した研修の成果が実り、研修生OBの中には、卒業後に村長として村人の信頼を集めるようになった人材もいます。また、多くの部族社会の調和の上に成り立つそれぞれの地域の文化を大切にし、後世まで保存していくため、すべての研修生に、出身部族を含め3つ以上の文化について学ぶ機会を設けています。

近況・今後の方針

 外部からの講師を招いたセミナー、研修センターの外へ出ての実習などを通じて、新しい技術や知識を積極的に導入しようと心がけています。また、リーダーシップ形成のため、研修生は複数のグループに分かれて各グループで定期的にリーダーを経験。人の上に立って指示をし、話を聞くことを研修生に学ばせています。珍しいところでは、人間関係のカウンセリングについての講義なども取り入れています。今後も、地域に有益な人材を輩出すべく、新たな知識、技術を取り入れた効果的な研修を継続していきます。