2021年12月8日

インドネシアに想いを馳せて

  • 本部スタッフ
  • 本部から大垣です。

    インターン期間も含めるとオイスカに入ってからあっという間に1年が経過し、時が経つ早さに驚いています。オイスカに入るまでは、ラテンアメリカや太平洋地域に興味の矛先が向かっていましたが、最近はアジア地域への好奇心が溢れ出ています。

    いつの日でしょうか、日経新聞の「交遊抄」で、現代小説を貪り読んではトルコ社会に立脚した物事の見方を養う外交官のストーリーが紹介されていました。私も物事の大枠だけ知って頭でっかちにならず、異国の教養を嗜みながら、自分なりの視座を持って仕事ができるオイスカ職員になりたいと感じたのを覚えています。

    そんな経緯から最近は一番関心を寄せているインドネシアに関する小説を読んでいます。直近で読み終えたのがご覧の2冊です。

    1.利権聖域 ロロ・ジョングランの歌声 松村美香著(角川文庫)

    簡単にご紹介すると、一冊目は週刊誌記者の菜々美が中部ジャワ自身の現地取材をきっかけに、東ティモールで殉死した新聞記者の従兄の足跡を追うストーリーです。現地でも多くの日本人に出会うわけですが、登場する国際ボランティア、日系商社、開発コンサルタント達が中部ジャワ地震を一つの切り口として、どのような思惑・心情でインドネシアでの国際協力に携わってきたのかが垣間見える内容でした。

    2.赤道 星降る夜 古内一絵著(小学館文庫)

    二冊目はブラック企業に追い詰められ自殺を試みた達希が祖父の霊に助けられ、借金の肩代わりを約束にボルネオ島(カリマンタン)での人探しを手伝うストーリーです。なんとなく現地に赴いた達希でしたが、旅をする中で戦時中は主計科の食糧生産部隊として稲作指導にあたっていた祖父の過去、生前は決して口に出すことのなかった祖父の記憶を辿っていきます。

    どちらの本も私がなんとなく漠然としたイメージを持っている“国際協力”について問いかけられる内容でした。国際協力は大枠の名称でしかありませんが、海外に関わるという以上、外部者としての自分の立ち位置、活動する意義を自覚している必要があると感じています。 

    これまでにオイスカ活動やご縁あってミャンマーに関連する本は読んだことがあります。今回は両冊を読み進めるうちに草の根のNGOが持つ力、そして何よりなぜオイスカが戦後復興期に生まれ、どのような人達が草創期から活動に関わってきたのか、なぜアジア太平洋地域なのかを更に深く考えさせられました。

    ボルネオ島で起きたこと、その他様々な場所で起こった出来事について、Z世代と呼ばれる私(私達)はあまりにも無知です。それでも小説等を通じて、現地に想いを馳せる努力を重ねながら、過去と現在を結ぶ時間軸にどう自らを位置付けるかが常に問われていると思います。

    昨年の今頃はちょうど中部研修センターでマレーシアはボルネオ島とフィジーから来た農業研修生達と里芋を水洗いしていました。凍てつくような寒さの中、里芋を冷水で洗うのは手先の感覚が無くなるような体験だったのを覚えています。それでも、同じ空の下、お互いに協力しながら農作業に取り組み、将来について語り合った時間は、今日の冷え込んだ空気さえも温める優しい記憶です。

    国籍、民族、宗教、言語、文化の違いを乗り越える。言葉でいっても難しいことは歴史に留まらず、スマホに日々流れてくるニュースを見ても明らかです。紛争の現場を自分の目で見たいと私が半年間滞在したイスラエルでも、いかに表層の下は複雑で、妥協できない正義がひしめき合っているかが垣間見えました。

    世に溢れる多様性も大別して括ってしまうのが苦労せずに理解しやすいのかもしれません。繰り返しにはなりますが、上記の5つの違いを乗り越えて共存することは本当に尊いことだと思います。それを理念に掲げるオイスカ、そして理念が実現されているセンターでの生活はまさに平和だと感じます。

     数冊の本で物事を理解することは到底不可能ですし、断片的な切り取りで自分の視座が高まるとは微塵も思ってもいません。けれども、いつか海外の現場、特にインドネシアに行ける日には、今頃の自分が感じていることを心に留めて、仕事に励みたいです。

     今回ご紹介した2冊、是非とも手に取ってみてください。

    この投稿へのトラックバック:

    アーカイブ