2022年1月26日

【~「住み続けられる未来のカタチ」リレーメッセージ~】定置型の有機農法を全国に広げたい①

  • 海外スタッフ
  • ~「住み続けられる未来のカタチ」リレーメッセージ~

    オイスカ60周年に策定した10ヵ年計画、そして冬募金に関連して、
    国内外からのスタッフより、未来に向けたメッセージが集まっています。

    今回は、パプアニューギニアからコメントが届きました。

    リレーメッセージはYouTubeでも公開中! ぜひご覧ください


    こんにちは。パプアニューギニア駐在代表の荏原です。

    まずは、ラバウルにある、オイスカラバウルエコテック研修センターの活動をお話します。センターでは“近年進む青年の農業離れ”を減少させるため、「環境に配慮した儲かる農業」の普及拠点として、生命の連鎖有機農法の研修を提供しています。主に10ヵ月の研修コースですが、他にも、不定期に2週間や3日、1日などの短期研修コースもあり、地域の有機農林畜産業のリーダーとなる人材を育成しています。パプアニューギニアで活動を開始した1986年からの35年間で、約2000人が研修を受けました。

    研修科目は、生命の連鎖有機農法を軸に、水陸稲(オカボ)栽培、堆肥やぼかしなどの有機資材作り、養鶏、養豚、淡水魚の養殖、果樹栽培、薬用樹、有用樹などの育苗と栽培、管理など、実技を70%、座学を30%の割合で実施しています。

    パプアニューギニアの農民の多くは、数年間使用して地力の衰えた農地を離れて別の場所に移り、草木を焼き払い農地とする伝統的な焼畑農業を行っています。生物多様性保護や森林保全のためには、移動式の焼畑農業ではなく、定置型の農業が有効です。研修センターでは、定置型農業の普及のため、ぼかしなどの有機資材を使った土づくりの指導にも力を入れています。

    有機農林畜産業研修の他に、家族の中での女性の地位向上のため、能力や個性を発揮できるよう、洋裁や石鹸づくり、パンづくりなどの女性エンパワーメント研修も実施しています。また、刑務所からの出所後の収入の糧となるよう、元服役者を含む服役者へリハビリテーションの一環として有機農林畜産業研修を実施し、再犯防止や地域の治安維持にも貢献しています。

    近年、オイルパームや森林伐採企業からの圧力や大金の誘惑に負け、原生林と共に生活する部族が土地を手離すケースが増えています。その結果、原生林がアブラヤシ(オイルパーム)プランテーションとなり、かけがえのない原生林が減少しています。オイルパームは吸肥力が非常に強い根を持つため、オイルパーム栽培は、土壌の肥沃さを失います。また、生物多様性が失われ、農薬や化学肥料の多投のために環境面へ大きな負の影響を残しています。原生林と共に自然の恵みで生活してきた部族の伝統が壊され、生活が脅かされている現状も放置できません。

    更にパプアニューギニアの土地の97%は800余りいると言われる部族の所有で、残りの3%は国と個人の所有という形態です。部族が所有する農村地域の土地は、境界線が曖昧であることが多く、土地の境界を確定し登記に至るまで多くの時間を要しています。その隙間をぬってオイルパーム企業などが入り込み、土地使用をめぐる争いも発生しています。

    そこで、オイスカは、原生林が生命に満ち、生物多様性が非常に豊かであること、子々孫々引き継いでいくべき部族の財産でありかつ世界の財産であることを話し、原生林の重要性を説いています。土地の登記のための手順や助言も行い、更に、登記に必要な経費の負担も企業の協力を得て進めています。

    次回は、センターの描く10年後の未来についてお話します。

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