2021年10月26日

長先生!

  • 本部スタッフ
  • 啓発普及部GSM担当の鈴木です。

    先日、森林総合研究所の方が、海外事業部の調査研究担当部長の長さんを訪ねて事務所に来所されました。
    4人のうちのおひとりは、海岸林再生プロジェクトの現場でも土壌の調査をしてくださっているお方。
    事務所にお姿が見えるやいなや、吉田さん、林さん、浅野さんの3人が吸い付けられるように玄関でお出迎え。
    はて?どなただろう??
    と不思議に思っていたところ、現場でとてもお世話になっているOさんとのこと。
    「いや~ 作業着でないOさんをはじめてみました」
    と気さくに会話を交わしています。
    現場にめったに行かない私なので、Oさんのイメージを勝手に作り上げ、
    イメージとちょっと違っていたので、別人を見ているようでした(^^;

    森林総研の方々がお見えになった目的は、オイスカの中でマングローブ植林といえば右に出る者はいない、長さんへのヒアリング。
    長さんは、森林総研が林野庁から受託した「森林技術国際展開支援事業」に委員としてかかわっていて、その一環でオイスカのマングローブ植林の知見を共有するために来所されました。
    長さんのマングローブの話を聞く機会はめったにないので、話を楽しみにしていたこともありますが、
    森林総研のみなさんがどのような質問を長さんに投げかけるのかにも興味がありました。

    「長先生、あのー・・・・」
    あれっ?長先生???
    長さんが先生?? 
    先生と呼ばれていることにまずびっくり!
    オイスカの技術は、森林の専門家の方々から先生と呼ばれるレベルなのだ!! 
    (ほほぅ・・・それはすごっ)

    手前が森林総研のみなさん、奥が長先生!

    長先生の話によると、
    オイスカのマングローブ植林は、1985年ごろ、フィリピンのミンダナオで始まりました。
    企業支援のプロジェクトなどではなく、当時、ミンダナオに駐在していたスタッフが、何となく種を沿岸の泥地にさしてみたら大きく育ったというのが始まりです。

    その後、アジア開発銀行の支援で大型プロジェクトを実施。
    フィリピンのパラワンでは大成功したのですが、他の地域での植林はうまくいきませんでした。
    うまく育たなかったサイトには、波の強さ、土壌の違い、フジツボの付着など、色々な原因があったようですが、当時は知識が不足していてよくわかっていませんでした。

    その後、他の国々での苦労・経験を経て、現在は、マングローブ植林技術に関する多くの知見を持つに至りました。
    現在は、それぞれのサイトの特性に合わせて植栽方法を変えています。
    ただ、植林の技術だけあれば成功するかというとそう簡単なことではありません。
    ほとんどの植林現場の周辺は、多くの人々が生活を営む場所でもあります。
    ですから、マングローブが育ってきた後は、森を維持していくための住民の巻き込みの努力・工夫がより重要性を増してきます。

    マングローブ植林プロジェクトを進めるうえで必要なノウハウを蓄積し、1999年からは、東京海上日動火災保険(株)様のご支援でタイ、バングラデシュ、インドネシアなどで大型プロジェクトを実施。
    インドネシアでは、大きく育ったサイト内にデッキをつくり、エコツーリズムができるようになっています。ここを訪れるのは、インドネシアの都会の人々で、これがなかなかの収入になっているのだと。

    などなど興味深い話が次々飛び出します。

    恥ずかしながら、森林総合研究所という組織のことをあまりよくわかっておらず、木や森の技術的な研究をしているところと思っていました。
    来所された4人の方のうち2人が社会科学系の方でした。
    バリバリ理系の方ばかりと思っていたのですが、あれっ文系なのかな??
    その方が質問されたことの中に、
    「マングローブ植林をするにあたり、住民から反対されたことはありますか?」
    「現地の行政機関との関係は良好ですか?」
    というものがありました。
    あっ(-_-;)・・・ 
    木や森は研究者が管理するものではなく、住民が管理し続けるものなので、住民や地元の行政機関の理解がなければ維持されない・・・社会科学系の研究者がいらっしゃる理由はそこにある。
    考えてみれば当たり前ですが、そこまで考えが及ばなかった自分に自分でびっくり(・.・;)
    森を維持管理するための住民の意識付けをどのようにしていくのかを研究するのは楽しそうです。
    何かしらのインセンティブがなければ、成長した木を伐採して売り払ってしまします。
    そうならないために、何かしらの恩恵を受けられるものでなければならない。
    大型台風や高潮から家やコミュニティを守る、防災減災の機能だけでは弱い、日常で恩恵を受けられるものでなければ・・・
    二酸化炭素吸収のために森をつくろう!と呼びかけても、その土地の人に直接的に恩恵がなければ森は維持されない。きれいごとだけではだめなのです。
    住民や行政機関との良好な関係を維持し続けることは、オイスカの活動にとって重要なこと。

    森林総研の方々と長先生との話を聞きながら、たくさんのインプットをいただきました。
    今後に活かしていかなければと思っています。

    それはそうと、お話を聞きながら、
    「そうだ!そうだ!!」とひらめいたことがありました。
    マングローブを題材に、オイスカのこれまでのマングローブ植林、国によって違う植林事情などなどをイラストで紹介したらおもしろいだろうなぁ・・・ミャンマー募金で作ったようなものをマングローブ版で。
    イラストを描き始めると没頭してしまう私は、これは一種の現実逃避なのだと気づきました。
    色々な仕事が片付いて、暇になったらやりたいなぁ

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