2019年7月10日

海外で結果を出している干害防備・水源涵養の森林 ~ECO-DRRの知恵を求めてNo.9~

  • ECO-DRR
  • 本部スタッフ
  • 海岸林再生プロジェクト担当の吉田です。

    今年の冬、乾季のフィリピン北部、タイ北部をじっくり歩いてきました。
    日本の誰もが想像しないようなレベルの、日常の一光景という数の山火事、
    呆然とするほどの広大な燃えたばかりの山火事跡を目に焼き付けてきました。

    それとともに、見渡す限りの裸山化した里山、乾季は谷戸田もできない無数の耕地、
    農薬で白濁化し、安心して飲める水源が確保できない多くの村々も訪ねました。
    オイスカ最大の山地造林、フィリピン・ヌエバビスカヤ州のキラン村の名前は、
    日本語に訳すと「水無村」ということも初めて知りました。

    そういう中、「子供の森」計画をきっかけにオイスカと出会い、
    その次に、オイスカのサポートで政府から小規模規模の造林の許可をとり、
    植栽・保育を続けた結果、乾季でも干上がらない安定した農業用ため池に成功し、
    林産物、山菜、養魚などで村全体の収入向上に成功した北部タイの山岳民族や、
    周囲の里山は裸山化しているのに、自助努力を極めたような50haの造林で、
    水源の確保と二期作に成功しているフィリピン北部の山岳民族の村も見ました。

    2001年から植え始めた森林を活かし、ゼンマイが安定し、村民共同で得た自己資 金によるゼンマイ田の拡張も始まっていた(タイ・チェンライ県山岳民族のパポ ン村)
    2001年から植栽した森林を活かし、ゼンマイを栽培。村民共同で得た自己資金によるゼンマイ田の拡張も行われている(タイ・チェンライ県山岳民族のパポン村)
    およそ10年前から、6ha・水深8mのため池の水位安定。養魚収入も大幅向上。 (タイ・チェンライ県山岳民族のパポン村)
    およそ10年前から、6ha・水深8mのため池の水位が安定している。養魚収入も大幅に向上した。 (タイ・チェンライ県山岳民族のパポン村)
    周囲の村とは違い、1997年の「子供の森」計画開始以降、50haの森林を複層林 化・保育したこの村だけは、手の字型の大きな谷戸田で年2回稲作ができる。 (フィリピン北部指折りの貧困地域のアブラ州山岳民族のビラビラ村)
    周囲の村とは違い、1997年の「子供の森」計画開始以降、50haの森林を複層林 化・保育したこの村だけは、手の字型の大きな谷戸田で年2回稲作ができる。 (フィリピン北部指折りの貧困地域のアブラ州山岳民族のビラビラ村)
    2014年に「子供の森」計画開始。この場所から細いホースを5㎞引いて、安全な 飲料水を乾季でも学校に供給できるようになった。(タイ・チェンライ県山岳民 族のメーパクレー村)
    2014年に「子供の森」計画開始。この場所から細いホースを5㎞引いて、安全な 飲料水を乾季でも学校に供給できるようになった。(タイ・チェンライ県山岳民 族のメーパクレー村)

     

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    山麓の微高地を利用した農業用ため池兼プール。1992年からの一大はげ山州にお ける森林造成で成立した果樹栽培収入を活かし、私費で建設された。渇水対策と して、乾季でも安定した水源となっている証明。(フィリピン北部ヌエバビスカ ヤ州キラン村)

    日本では、そのような限定的な水源確保のための小規模な森林は、
    「干害防備保安林」と位置付けられ、約5万ha、私から見れば無数にあります。
    メジャーな存在の「水源涵養保安林」と違い、誰からも振り向かれないながらも、
    生活に近い場所で黙々と役目を果たしており、わが名取市の山麓にも1ヵ所あります。

    成田市の坂田が池。日本では当たり前にある森林に囲まれた自然公園兼農業用た め池だが、公園化による森林管理というアイデア、「ため池決壊」などの危険性 回避策なども、10月の現地スタッフと研修できれば。
    成田市の坂田が池。日本では当たり前にある森林に囲まれた自然公園兼農業用た め池だが、公園化による森林管理というアイデア、「ため池決壊」などの危険性 回避策なども、10月の現地スタッフと研修できれば。

    オイスカで進めていきたいEco-DRR(森林など生態系を活用した防災・減災)とは、
    発生してしまった災害の復旧というよりも、できるだけ未然に災害を防いでいくことに
    力を入れたいと思いますし、災害もさることながら、常態化して諦めてしまっている
    「気象害」に対し、知恵と行動で乗り越えようという働きかけです。

    「水を吸い上げてしまうから、山には木を植えてはいけないと思っていた」と
    フィリピン・タイの山岳民族の村では、今でもそう考える人が多いことも知りました。
    実践を重ねてきたオイスカには、相当なアドバンテージがあると思っていますが、
    どうしたら、少ない労力、最短の時間で、一定の効果とインパクトを村に与え、
    森林への理解、自助努力促進につなげられるか、仲間とともに作戦立案したいと思います。

     

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