海岸林担当の吉田です。
今年3月、フィリピン北ルソン出張で、昨年10月の洪水に見舞われ、
支援した村を訪ねる機会がありました。
訪ねたのは、まさに渇水の乾季でした。少なすぎる水、多すぎる水。
世界中そういう村はいくらでもあることでしょう。
国内有数の貧しい州、はげ山ばかりの山脈に囲まれた盆地、
大河川のアブラ川本流と大きな支流の合流点の村。
「牛の背中に我が子を乗せて、私は尻尾につかまって泳いで逃げたのよ」と
若い農家の奥さんが言っていました。両側に堤防がないわけではないですが、
いつもとレベルが違ったようです。
災害は同じ場所で繰り返すことを念頭に置いて仕事したいと思っています。
政府の支援はまったく及ばなかったあの村、どうすれば改善できるだろうか。
オイスカアブラ農林業研修センターから車で、たった5分の村。
気になっていました。
私の自宅の昭島市の、地元の中の地元だけが堤防の意味を知っていて、
江戸時代に造られたらしい「食い違い」と呼ばれている治水堤防。
いわゆる「霞堤」、つまり「信玄堤」。山梨から全国に広がりました。
何度も通ったことはあるけど、あらためて自分の目で確かめたかったため、
犬の散歩も兼ねて、往復8㎞を歩きました。
私の焦点は、竹林や森林を堤防に組み合わせて使っているかどうか。
「百姓伝記」という江戸時代の農業指導書にも、堤防の集落田畑側に
竹林を配置することが勧められているそう。堤防の川側には河畔林として
堤防決壊防止にする箇所もあるようです。
「ECO-DRRって、まさに保安林のこと」
仙台署の前の海岸林責任者の方がそう言っておられましたが、
17つの保安林の中に、「水害防備保安林」という区分があります。
近年の日本の河川行政は、洪水を堤防内に閉じ込めるという発想を転換し、
霞堤、信玄堤、そして水害防備保安林が再評価されていると聞いたばかり。
オイスカ施設がらみでは、中部日本研修センターの麓を流れる
矢作川の竹林は有名のようです。
犬の散歩の距離ながら、かなりいいヒントを得ました。
フィリピンの天然資源環境省アブラ州担当や州政府の方たちや、
実行力と「やりましょう!」と言うのが代名詞のデルフィン所長たちへの
情報提供になるかもしれない。もっとつっこんで勉強してみます。