12月18日、モンゴルのエルデネト銅鉱山グループ環境関係職員8名が、日本の大気汚染の歴史と対策を学ぶため、独立行政法人環境再生保全機構と、川崎市環境総合研究所を訪れました。
現在、ウランバートル市は世界最悪と言われる大気汚染が緊急的な課題となっており、地方都市にも環境汚染が広がっています。モンゴルは石炭資源に恵まれているため燃料としての石炭への依存度が高く、特に冬場の暖房に使用される石炭の煤煙が大気汚染の原因になっているほか、都市の人口集中に起因した自動車の交通量増加に伴う排気ガスも大きな要因となっています。
今回来日したエルデネト銅鉱山グループの工場は、オイスカ・モンゴルのユースセンターに程近く、同グループの関係者がオイスカ・ハンガイ支局の支局長を務められ、グループとして、オイスカのモンゴル・ブルガン県セレンゲ村での環境保全活動に協力しており、工場からの排煙や排水などによる環境問題を重要視していることから、オイスカを通して訪日ツアーの1日を活用し、川崎市の上記施設を訪問し、今後の環境対策を共に学ぶ運びとなりました。ツアーには、オイスカ・モンゴル総局事務局長のニンジン・ギリヤセドが同行、全行程において通訳を行いました。
初めに訪問した独立行政法人環境再生保全機構では、補償業務部業務課長の杉崎浩和氏より日本における公害被害の発生の歴史や、公害による健康被害の補償・予防についてご講義いただきました。日本経済の急激な成長に伴い国民の生活水準が向上した一方、高度経済成長初期において石油化学工業が発展し大規模コンビナートが次々と造成され、工場の煤煙・汚水による環境汚染が激化。周辺住民より水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくなどをはじめ川崎も含む全国各地で公害訴訟が起こり、公害による健康被害が重大な社会問題へと発展、被害者への補償として公害健康被害補償法の制定や、補償給付が行われるようになったことなどを説明いただき、参加者はメモを取りながら熱心に耳を傾けていました。終わりには、大気汚染の基準や指標などについて質問があげられ、代表者からお礼の言葉が述べられました。
次に訪問した川崎市環境総合研究所では、事業推進課長の藤巻浩氏及び早坂孝夫氏より川崎市の公害問題の歴史や、条例、環境施策などによる対策、企業や市民との連携についてお話を伺うことができました。川崎市沿岸地域の埋め立ての歴史や60年代に深刻化した環境・大気汚染に触れ、厳しい法条例によって企業等の対策技術の改善が進んだことなどが説明されました。また、同研究所内の展示施設も紹介いただき、川崎の各地の取り組みや60年代と現在の川崎市の大気環境の変化の上空写真等を学び、参加者は展示物の写真を撮るなど強く関心を持たれた様子が見受けられました。
講義後ツアー参加者は、今回にとどまらず来年2月に行なわれる川崎国際環境技術展も見学したいと話すなど、さらに環境対策への意欲を高めていました。オイスカも、モンゴルで環境保全活動を促進するために同国の大気汚染問題を重要課題と捉え、この度伺った日本の事例を参考に課題解決へ向けて取り組んでまいります。