2018年9月25日

林業は斜陽産業ではない!

  • 本部スタッフ
  • 海岸林担当の鈴木です。
    先日、林野庁の「森林・林業白書」の制作を担当している田中さんから直々に、オイスカ職員向けに白書についての解説をしていただきました。
    「森林・林業白書」というのは厚さ1.5㎝、300ページにもなる一般にはあまり馴染みのない書物ですが、各省庁が発行している1年間の活動を報告する年次報告書のようなものです。
    「防衛白書」並みに人気のある「白書」にしたいんです!と冗談交じりに田中さんが話していました。
    昨年のものより写真、図表を増やし、目に優しい白書にしたそうです。
     
    そうはいうものの、1.5㎝もの分厚い本を手渡され、すぐに読んでみようという気にはならないものです。
    林野庁の年次報告班のみなさんは、もっと白書を活用してもらいたいと、白書が完成した6・7月は全国行脚に出るそうです。全国の林業系の大学などの教育機関を中心に年間50ヵ所、2000人に説明するそうですから、とても精力的に動いておられます。
    昨年7月から白書制作の担当になった田中さん、この数か月の全国行脚で「性格が変わりましたよ。こんなに積極的に話す方ではなかったんですけどね~」と。
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    1時間の講義の中で「へぇ!」と思った内容がいくつかあります。
    ・国内のバイオマス発電所の数は増加していて、エネルギー源として利用された間伐材や林地残材などはこの7年で13倍に増加。
    ・明治期には鉄道用の枕木、マッチの軸木などが主要な輸出品で、外貨獲得に貢献
    ・戦後、はげ山のように荒廃した森林に、主にスギやヒノキを植えて再生に取り組んできた。兵庫県の六甲山は大正期は、ほぼはげ山状態だったことに驚き。豊かな森林は先人たちの苦労の賜物なのです
    ・木材自給率は前年に比べ6%上がり35%。食料自給率に近づきつつある
    ・林齢51年以上の木は人工林全体の35%(360万ha)、この10年以内に林齢51年を越える人工林は319万haと、材の活用の時期を迎えている
    ・丸太価格は国際的に同価で1㎥=100ドル程度。国際市場にあって国産材の丸太価格を上げることはできないため、森林所有者へより多く還元するためには、流通コストの合理化が必要
    ・CLT(繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料)を使用した10階建ての賃貸住宅が仙台市で着工中。CLTの床材を使った日本初の高層建築物
    ・木材輸出額は5年前(H24)93億円だったのに対し、H29は326億円に増加。特にアメリカへの輸出が増加
    林業といえば、ニュースで耳にする「担い手不足」「手が入らないことによる森林の荒廃」「斜陽産業」といたマイナスイメージが根強くあります。
    資源小国といわれる日本ですが、国土の約7割が森林と世界でも有数の森林大国なのですからこの資源を利活用することで持続可能な循環型社会がうまれます。
    戦後に植林したスギやヒノキが樹齢50年程度となり、「収穫期」を迎えています。伐採した木を材として、材として活用できない部分はバイオマス発電の原料として活用する。そしてまた植えるという循環サイクルが生まれます。
    畑に野菜を植えて収穫するのと同じように、材を活用するために植えた人工林は収穫して、また新たな苗を植えることが必要なのですが、畑の野菜と違い収穫までに要する時間が50年と長いことが「収穫」を意識できない原因となっているのかもしれません。環境を守るためには、木は切ってはいけないという間違った固定概念が根強くあります。
     
    アメリカに住んでいた頃、クリスマスシーズンを前にちょうどお手頃サイズに成長した高さ2m弱のモミの木がスーパーの店先、仮設売り場などに並べられていたのを思い出しました。立木の中から自分好みのものを選び伐採する「モミの木狩り」というものもありました。最初は木を伐るなんて!という思いでしたが、畑で野菜のように育てられたものだから収穫するのは同じなのか~とある時から思うようになり、クリスマスツリーとして生木を使うことに抵抗がなくなりました。木も収穫しなければならないのです。
    森林についてあまりにも無知だなぁと実感させられました。
    田中さんの話し方が見事だったこともあり、有意義な1時間でした。
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