【米崎保育園】
4月に新園舎に引っ越したばかりで、真新しい建物はまだ新築の木の香りがしていました。園長先生に突然の訪問をお詫びし、「森のつみ木広場」のお話をすると「ぜひやっていただきたい」と歓迎してくださいました。まだ園児たちの遊び道具がそろっていないということで、皆さまに支援いただき製作したつみ木一箱(約800ピース)をプレゼントしました。「いい匂いねぇ。角も取ってあって、すごくさわり心地がいいのね」と、とても気に入ってもらえたようで、一安心。
「それじゃ先生、本当にお世話になりました」。「またこっちに来る時はぜひ顔見せてね」。私たちが園長先生とお話している時に漏れ聞こえた保護者の方と先生の会話。きっと、被災地を離れ、引っ越していくのでしょう。住み慣れた場所を離れ、仲良しのお友達と離れ離れになってしまう心細さ、寂しさは小さなお子さんにとって、どれほど大きいか…と胸が締めつけられました。せめて、「森のつみ木広場」を実施する時には、園に残った子どもたちが友達と一緒に作品を作ることで、より友達とのつながりを意識し、絆を深めてもらえるように、いつも以上に意識しようと心に決めた瞬間でした。
【高田保育所】
「私たちの園は全部流されました」。涙ながらに話してくれたのは、米崎保育園の旧園舎を借りて再開した高田保育所の園長先生。津波で園舎がなくなり、先生たち自身も津波の恐怖を目の当たりにしたと言います。つみ木をプレゼントすると、「まだまだ自分たちが不安定でね。ごめんなさいね…でもいろいろな人が助けてくれて、本当にありがたくて。おもちゃもいただいたけれど、つみ木はなかったの。だからうれしいわ」。と、時おり声を詰まらせながら気持ちを打ち明けてくれました。
先生たちも悲しくて辛い思いをしながらも、懸命に明るく子どもたちに向き合っている姿を前に、私たちがするべきことがもう一つ見えた気がしました。子どもたちに日常的に接するのは先生や保護者の方たち。「森のつみ木広場」はイベントとして子どもたちに楽しい時間を提供できるものではあるけれど、長く子どもたちに接し、心のケアをしていけるものではありません。先生たちの相談にのったり、継続的に子どもたちをケアできるような要素を、ワークショップに加えられないだろうか? ワークショップを実施した際に、子どもたちの気持ちや状況を周りの大人と共有し、また大人が抱える悩みも受け止めることができれば…プレゼントしたつみ木が遊び道具以上の意味を持つものとして活用していってもらえたら…そうすれば、1回の「森のつみ木広場」が、その後も子どもたちのケアや子どもと接する先生方のヒントとして少しはお役に立つのではないかと考えました。そのためには、やはり「森のつみ木広場」を一緒に実施してくれる心理療法士や小児科の先生など、プロの方にご協力いただく必要があると感じました。
【特別養護老人ホーム高寿園】
避難所となった老人ホームでは、400名近くの方が避難していました。ホームの部屋を利用し、体育館の避難所に見られる間仕切りなども少なかったせいか、アットホームな雰囲気がありました。子どもたちのお母さんからお話を聞くと、「仮設住宅ができると、みんながバラバラになって生活するでしょう。お年寄も多いし、そうなった時に、せっかくここで生活した仲間がまた会える機会があると、励みになるんじゃないかな。つみ木をそのイベントに使ってくれたら、きっと喜んで来てくれると思う」と話してくれました。
阪神淡路大震災の時は、仮設住宅で孤独死した方も多くいたといいます。仮設住宅にみんなが入ることができ、落ち着いたかに見えるその時からが、本当に大変な時なのだと聞いたことがあります。「森のつみ木広場」はもしかしたら、そうした復興段階に入った皆さんの心をつなぎ、お互いに励まし合う場としても使っていただけるかもしれないと気が付きました。
【高田第一中学校】
テレビでもよく報道されるこの学校では、偶然の出会いが大きな財産になりました。ここでは、同じNGOである(公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが避難所の子どもたちに提供する遊びの場、「こどもひろば」を見学させていただきました。
子どもたちが安心して遊べる場所として、スタッフが付き添い、子どもたちと一緒に遊ぶ時間を設けています。スタッフの方の「今日は何をしようか」という問いかけに、子どもたちが案を出し、遊びを決めます。みんなで決めた「だるまさんが転んだ」をしている子どもたちの楽しそうな表情を見て、少しほっとしたのと同時に子どもたちにとっての「遊び」重要性を改めて感じることができました。
また、同校ではチャイルドライフスペシャリストという資格をお持ちの赤坂氏とお会いすることができました。つみ木の話をすると「子どもたちにとって、とても良いプログラムだと思います」と、後押しをしてくださいました。そして、お知り合いの小児科医や心理療法士の方たちが、震災支援で何かできることがないかと模索されているということ。オイスカにとっても、つみ木を一緒に行うことができれば、とても心強いし、先生や保護者の方のお役に立てるプログラムを作ることができるかもしれない!と考え、早速ご紹介いただけるようお願いし、東京に戻ってから連絡を取り合うことができました。
陸前高田市では、突然訪問した私たちを皆さんとても親切に迎えてくださいました。疲れや悲しみ、大変な想いを抱えながらもよそ者の私たちに優しく接し、感謝の言葉をかけてくれました。何もできていない私たちへの「ありがとう」の言葉に、元気をもらいありがたく思う半面、申し訳なさも感じました。「森のつみ木広場」を本当に喜んでもらえる活動・元気をプレゼントできる活動として準備し、今回出会った皆さんに必ず再会したいと、今、強く思っています。
(報告:本部啓発普及部 石原真弓)