2011年8月1日

東日本大震災復興支援 被災した海岸林の現地調査を実施再生活動協力を模索

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    根元から倒れ枯死しているクロマツが続く

     オイスカでは5月24〜26日の3日間、飛砂塩害防備、防風、防霧、風致保健などに役立ってきた海岸防災林の被災海岸林再生への協力の可能性を探るため、渡邉忠副理事長以下4名を宮城県に派遣しました。国、県、地元森林組合、種苗組合などの方々との情報交換、また被災した地元の方々との懇談、そして現地調査などを行いました。 

     今回の東北地方の防災林被害は判明しているだけで3800ha(6月現在)に及び、その約3分の2を宮城県が占めています。現地調査は、宮城県南部・阿武隈川河口域にある岩沼市の亘理地域の海岸林調査から始まり、仙台空港が見える名取市北釜地区の海岸林、空港近くの防風林、白砂青松の海岸として県民のいこいの場・海水浴場として有名な閖上浜海岸林、さらに北上し多賀城市七ヶ浜菖蒲田海水浴場海岸林、石巻港付近の東松島市野蒜地区に至る6ヵ所で実施しました。また、海岸林再生に用いられる松くい虫(マツノザイセンチュウ)に対して抵抗性を持つクロマツの種子生産を行っている宮城県林業技術総合センター採種園を見学しました。 

     今回の調査の結果、被災した海岸林は、①防潮堤がえぐられ、構造物が林帯に散乱して、林帯も被災したタイプ(岩沼市名亘、名取市北釜地区)、②防潮提はなく、林帯が被災したタイプ(名取市閖上浜)、③人工砂丘により林帯の被害が少ないタイプ(名取市閖上浜)、④防潮堤は被害がなく、林帯のみ被災したタイプ(多賀城市七ヶ浜、東松島市野蒜地区)の4つの被災タイプに分けられました。 

     被害木を見ると、直径10㎝程度の細いものでは、そのままなぎ倒され倒伏枯死している個体がほとんどでした。太いものでは折損木(幹の途中で折れている木)が多く、根を露出して転倒している個体は太さに関わりなく見られました。また、多少でも盛り上がった凸地形では転倒木も少なく、生存率も比較的高いことが分かりました。深根性の特徴をもつクロマツは、地下水位の高い砂浜では根が表層に集中し、また密植により根が十分に横に張れないため転倒を助長したものと考えられます。一方、凸地形では土壌化が進んでいるため、根が深くまで入り、十分に支える力があり、また滞水時間も少なくて済むことから、塩害窒息死に至らなかったと考えられます。今後これら調査結果を踏まえた対策が必要であることが明らかになりました。 

     宮城県はその復興方針において海岸林の復旧を掲げているものの、沿岸市町村の町づくり再生と連携してどのように海岸林を再生するのか、またどのように民間の力を活用するのかはまだ明らかになっていません。

     ※なお今回の現地調査は、日本財団の「ROADプロジェクト」の支援を受けて実施されました。

    被災林に入り、樹木の状態を調査
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    「名取市東部震災復興の会」のメンバーと意見を交換。名取市立第二中学校避難所で
    「名取市東部震災復興の会」のメンバーと意見を交換。名取市立第二中学校避難所で
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