2018年6月4日

フィリピン 気候変動適応への好事例に 「災害に強い森づくり」の成果を確認

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  •      日本の外務省のNGO連携無償資金協力を得て、2015年3月からフィリピンで実施してきた「災害に強い、森に守られた地域社会づくりプロジェクト」が本年3月で区切りを迎えました。

    マングローブ(手前)と海岸林(奥)のダブルブロックの自然の 防波堤が実現(レイテ島パロ町)
    マングローブ(手前)と海岸林(奥)のダブルブロックの自然の 防波堤が実現(レイテ島パロ町)

     本プロジェクトの対象地は、13年に同国中部地域を襲った巨大台風ハイエンによって甚大な被害を受けたレイテ島とパナイ島東部。オイスカは直後の緊急支援を経て、約3年間にわたり被災者の生計向上や災害に強いコミュニティづくりを目指し、復興支援活動を行ってきました。レイテ島では、それ以前にも官民によるマングローブの造林が試みられましたが成功例はなく、台風の高潮から無防備な沿岸が多くありました。そこで本プロジェクトでは、徹底的な沿岸調査からスタートし、マングローブ植林に適しているエリアを見極めたうえでサイトを選択しました。フジツボが大量発生して植林後の苗の幹に吸いつくといった問題も発生しましたが、地域のボランティアが一つひとつ手作業で取り除くなどの地道な努力が実り、見事に活着しました。また、マングローブ植林に適さない砂丘海岸では、沿岸の陸地に海岸林を造るべく、砂地でも育ちやすくて潮風にも強い樹種を選んで植林を行いました。地形や土質などを見極め、適切な植林を行うことでフィリピン国内でも好事例となる海岸林の造成に成功。海岸線のマングローブ林、その先の陸地に広がる海岸林という二重の防御で、海からの強風や高潮などの影響を受けにくい地域社会づくりが実現しました。

    見張りタワーから臨む、生まれ変わっ た持続可能な森(パナイ島アホイ町)
    見張りタワーから臨む、生まれ変わっ た持続可能な森(パナイ島アホイ町)

    一方パナイ島では、水源林の80%が倒木などの被害に遭い、防災機能が著しく低下したアホイ町で植林に取り組んできました。同地における専門家の調査により、被害木のほとんどが、枝の長いアカシアマンギュウムで、強風の影響を受けたことが分かりました。調査の結果を受け、 再植林にあたっては、耐風性の高い在来種を選択して植栽したほか、その樹間には、コーヒーやカカオなど、商品作物として実のなる木々も植えました。こうした植栽の結果、住民が長く維持管理に関与可能な里山として水源林を再生することができました。
    プロジェクトは3月で区切りを迎えましたが、オイスカは、今後も続く地域住民による森の管理をサポートしていく予定です。

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