本年度も協働による国内での森づくり活動がスタートし、企業・団体がそれぞれの理念の下、オイスカと共に社員参加型の森林整備活動を進めています。多くの場合、企業は社会貢献の一環として森づくりに取り組んできた経緯がありますが、近年は〝人材育成〞の場として自社の森づくりの現場を活用する事例が増えています。
5月7・8日、日用品メーカーのライオン㈱は、新入社員92名を対象に山梨市で市有林の森林整備活動を行う研修を行いました。同社では、2009年よりすべての新入社員が配属前にこの研修を受けており、オイスカはそのコーディネートや当日の運営を担っています。本年度は「お客様と触れ合う」という研修テーマのもと、地元林業者や昼食準備を担う地域の婦人会など、社外のさまざまな方と接点を持つことで多くの気付きを得ることも、目的の一つとして掲げられました。参加者は、森を歩きながら日本の森林の現状などについてオイスカ職員のレクチャーを受けた後、地元林業者の指導の下、間伐とその材を活用し、土砂の流出を防ぐ土留めを体験。慣れない作業に疲労の色を隠せない様子ながら、「森を守ることの大変さ、大切さを体感した」といった感想が聞かれました。
首都圏近郊でスーパーマーケットを展開するサミット㈱は、店舗営業で多くの水を必要とすることもあり、東京都の水源のひとつである山梨県丹波山村の森林保全活動に支援をしています。その取り組みの意義を社員に伝えようと年間100名以上の新入社員を同地に派遣、作業を通じた研修が行われています。今年度からは水源地域を支えるための農業事業も新たに開始し、4月から5月にかけ、合計126名の新入社員が農業を体験しました。これは耕作放棄地を活用した取り組みで、野菜や惣菜などの食品を扱う企業の一員にとって生産者の視点に触れる貴重な機会となります。参加者からは「自然の中で無心に体を動かし爽快な気分になれた」「販売する商品をより大切にする気持ちが湧いた」といった声が聞かれました。同社の担当者は「普段の業務の中でいかにCSR意識を維持・向上できるかは企業として重要な課題。各店舗で使う水がどこからきて、それを守るために会社がどう取り組んでいるかを知ることに大きな意義がある」と話しています。
また、東日本大震災後にスタートした「海岸林再生プロジェクト」でも企業や団体からの研修受け入れ要請が増えています。行政からは昨年の宮城県森林整備課の二度の研修に続き、4月16日には山形県庁新規採用職員45名がプロジェクトを訪問、座学と植栽現場での作業体験が行われました。研修には公務員としての責任感と使命感を高め、〝住民視点・現場主義〞の意識を高める狙いがあります。短時間の研修ながら、プロジェクトでの経験がチームワークを強め、県政に臨む高い志の形成につながることが期待されます。