実施日:2019年7月6日(土)
実施団体:KDDI株式会社、鈴健興業株式会社、公益財団法人オイスカ
活動内容:シカ害対策ネット補修
当日早朝まで降り続いた雨の影響で活動地の足場も悪く、作業の実施が危ぶまれましたが、天候も次第に晴れ間が覗くようになり、当初予定していた作業内容やエリアを縮小しての活動となりました。この日は、「富士山の森づくり」推進協議会に参画いただいているKDDI株式会社、鈴健協業株式会社をはじめ、7ヵ国の大使館関係者、オイスカ個人・法人会員、また山梨県関係者など多くの参加者が集い、シカ害対策ネット補修を実施。雨が本降りになるまでの短時間の活動でしたが、富士山の涼しい天候の中テンポよく作業を進めることができました。また、作業後は「富士山の森づくり」推進協議会会長兼オイスカ緑化技術顧問の清藤による講義が行われ、プロジェクトの全体像や当日の作業の意義、今後の展開などについて改めて理解を深める機会となりました。
■開会式では、開会宣言として山梨県富士・東部林務環境事務所より「17年前、トウヒツヅリハマキの幼虫により100haのシラベの森が立ち枯れましたが、約4万本の植栽を行ってきた。『富士山の森づくり』の活動は今年で13年目となり、次第に豊かな森が戻りつつあります。本日はあいにくの天候です。活動地で周りを見渡してみると、その様子が分かると思います。今日は、世界遺産の森づくり、今後の豊かな環境づくりへの祈念として森づくり活動に参加していただければと思います」と挨拶をいただきました。
続いて、(公財)オイスカ理事長中野悦子より「『富士山の森づくり』は平成19年に活動を開始し、現在は保育・育林活動を皆さまと共に行っているところです。本日の作業は、シカによる被害から木々を守るネットの補修。シカの被害にあっても、しっかりと育っている木を見て、大自然の営みを感じ、慈しみながら作業を行ってほしいです。そして作業後、今よりもっと優しく笑顔の皆さまと会いたいと思います。山岡鉄舟の『晴れてもよし曇りてもよし富士の山 もとの姿は変らざりけり』という歌があります。これはどんな環境にあっても、まわりが変わっても精神は同じということです。この富士山を心に描きながら皆さまのご支援を頂いて活動していきたいと思います」と挨拶がありました。最後に「富士山の森づくり」推進協議会会長兼オイスカ緑化技術顧問 清藤より「さまざまな方々の協力を得て森づくり活動ができることを嬉しく思います。このプロジェクトは、ボランティアが行う活動として誇るべき4つの特徴があります。それは①広葉樹を大面積に植栽している ②年間500~600という大勢の人々がボランティアに参加している ③長期間にわたって活動を行っている ④調査・モニタリングを実施しているという点です。ボランティアの団体がこのような規模・内容で行っているのは稀なこと。このプロジェクトに参加することを誇りに思って、ぜひ楽しんで作業していただきたいと思います。」とプロジェクトの意義を説明した。参加者全員で集合写真を撮り、活動への団結を深めました。
■活動は10班に分かれ、それぞれ指導員からシカ害対策ネットの補修方法について指導を仰ぎ実施。作業は二人一組で行われ、補修のほか、植栽した木の成長を妨げる恐れのある近隣(植栽した木を中心に両手を広げた範囲)の木や枝の除伐や、下草刈りの作業も並行して行われました。
■支柱を立て、箸で仮止めしたネットを被せ、さらに外側に2本の竹をクロスさせ固定するといった少し手順の多い作業ですが、皆さん黙々と手際よく作業されていました。今年で「富士山の森づくり」活動が2回目という方は、「(前年は台風のため活動が中止となり参加できなかったが、)一昨年参加した時に見た木々が、見て分かるほど成長している」と話し、はじめての参加という方とも息のあった作業であっという間に作業を完成されていました。
■一方、中部日本研修センターからの研修生は、全員初めての富士山。作業ももちろん初めてのはずですが、手慣れた手つきで仕上げていきました。「いつもの農業の実習より簡単」と話しつつ、「富士山はとてもきれい」と笑顔を見せていました。
■お母さんと一緒に作業していた左写真のお嬢さんは、針金を使って、ネットを固定する作業がとても上手。お母さんが「将来は林業目指す?!」と話すほど。そして、右写真のお嬢さんは、お父さんと姉妹二人での参加。重いハンマーをものともせず「楽しい」とはにかみながら作業を続けていました。
■オイスカ職員の勧めで初めて参加した企業の方は、オイスカが派遣する技能実習生と共に参加。ボランティア自体が初めてということでしたが、日頃の仕事と違った作業で楽しいと、終始笑顔で活動されていました。
■また、これまで何度も活動に参加されている方々からは、「(今日の作業は)そんなに難しくない。伐採の作業が一番大変」、「作業はこれまで繰り返しやっているので慣れているが、雨の時期は大変。下草刈りの作業が好き」、「今日は他の予定もあったが、富士山の方に来た。いろいろな人がいて、短時間で交流できる、日常できない国際交流や県外の人との関われるところもいいと思う。それから、緑の中でリフレッシュできるのもいい」など、リピーターの方々の目線での作業の感想や活動の楽しみについて伺うことができました。
■午後、昼食を終えて行なわれた講義では、清藤より富士山の森の特徴や森づくりが行われるようになった経緯、理想の森を実現するためのこれまでの活動などについて説明をしました。また、開会式でも本プロジェクトの特徴について、順応的管理への取り組みを含めて解説し、100年の森づくりへの引き続きのご支援・ご協力が述べられ、参加者の皆さんが熱心に耳を傾ける様子が見られました。
■閉会式では、参加者より活動の感想をいただきました。「富士山の森づくり」推進協議会メンバーであるKDDI株式会社総務本部サステナビリティ推進室長鳥光氏は、「今日はあいにくの天気で、作業量は少なかったけれど、皆で活動地に入って作業をすることができて良かったです。また、この活動に参加して十数年になりますが、小さかった苗が自分たちの背を超えるほど成長しており、それを自分の目で確認することができたことも良かったと思います。特に今日は産官学、さまざまな立場の方との協働となりました。これからも引き続き皆さま方と協力をしながら、『富士山の森づくり』に貢献していきたいと思います」と感想を述べられました。
また、オイスカ会員の丹羽推進協議会会長の鈴木氏は、「いつもは『森のつみ木広場』を重点的にやっています。今回は(丹羽推進協議会の)皆は初めてこの活動に参加し、貴重な体験ができました。皆が愛する富士山で活動をすることができて大変良かったと感じています」と話しました。
オイスカ中部日本研修センターの研修生ソヌ氏は、「今日は初めて富士山に来て、本当に楽しかったです。また、自然の大切さがわかりました。自然は私たちの家。今日はたくさんのことを勉強させていただき、ありがとうございました。」と述べ、外交団を代表してメキシコのPria大使から「このような活動をする機会、また、私たち外国人が日本を助けることの出来る機会をいただき、ありがとうございます。100年の森づくりという長い取り組みは、私たちの世代だけでなく、子どもたちや未来のために行われるもの。このような経験をさせてくださった関係者の方々に感謝します」とそれぞれプロジェクトへの理解も述べられました。
閉会挨拶では、首都圏支部事務局長藤田より「今日は3つの感謝を述べたいと思います。一つは富士山と天への感謝。富士山があるからこそ、今日皆が集い、活動をすることができました。二つ目は、この活動のために準備をしてくださった方々への感謝。「富士山の森づくり」推進協議会を構成する山梨の林野関係の皆さんをはじめ、多くの皆さんが準備をしてくださいました。三つ目は、今日集まって下さった皆さまへの感謝。世界文化遺産にふさわしい素晴らしい富士山の森が再生できるようにこれからも皆さんからのご協力を賜りたいと思います。今日ご参加頂いた皆さんにもう一度お礼を申し上げるとともに、100年の森をつくり上げることをお互いに約束しながら閉会にしたいと思います」と挨拶がありました。
13年目の活動となり、植林活動から保育・育林活動へと変化している中で今回多くの方に参加していただきました。活動地での作業だけでなく、講義を受けていただいたことでより一層「富士山の森づくり」への理解が深まる機会にもなりました。森づくりは植えるだけでなく、保育管理が大切であり、森づくりには時間がかかるため、これからもご支援・ご協力をいただけたらと思います。