中国・内モンゴル自治区にあるオイスカ阿拉善沙漠生態研究研修センターでは、砂漠化防止技術の研究や植林活動などを進めています。この地域の砂漠化の原因は複雑で複合的なものであり、植林をすればそれだけで自然環境が改善するわけではありません。環境負荷の大きい放牧から環境負荷の小さい代わりの産業を育て住民の生活を安定させること、また、木もほとんどなくなり疲弊している現地の自然環境を改善することを同時に進めていく必要があります。
この課題に対し、オイスカは現地に元々自生していた「砂漠のマングローブ」とも呼ばれるソウソウという植物に着目。このソウソウに、強壮成分を有するホンオニクを寄生させて栽培しています。農家では、この栽培による収入で年収が数倍になるなどの成果をあげ、阿拉善東部にあるジランタイ村では農民の組合も設立されました。
活動を本格的に実施するために、2009年10月より三井物産環境基金の助成を受けて活動を拡大することとなりました。プロジェクトでは、ソウソウの植林・ホンオニクの栽培のほか、組合に対する技術的・資金的支援を計画、また、組合の強化も計画しています。同時に住民に対する環境保全のセミナーを実施。住民らの環境に対する意識を高め、植林後の苗木の積極的な保育活動を促す予定です。
今回の活動は現地のNGO「阿拉善SEE生態協会」(以下SEE=Society EntrepreneurEcology)と協力して実施することが特徴です。SEEは04年にできた新しい現地発のNGOで、同じ阿拉善地区で環境保全活動や地域開発活動を実施しています。
オイスカは02年よりジランタイ村での活動を実施してきましたが、その中で組合の組織力強化や参加促進が課題でした。今回、阿拉善SEE協会と協力することでその点が補い合えることが期待されています。09年10 ~12月にかけて実施された住民らとの話し合いでは、SEEの職員らをファシリテーターとしてプロジェクト実施のための合意形成が行われました。当初、植林本数は10万本が予定されていましたが、合意形成の過程で希望植林本数が83万本まで増えたことからも住民らの期待の高さがうかがえます。最終的には、現実的な遂行能力を考え、37万本、およそ250haの植林計画に落ち着きました。資金面でもSEEや阿拉善政府から助成を受けることになりました。今後もお互いの強みを生かすような協力体制での活動が増えていくことが予想されます。
当初、10年3月15日に活動スタートの予定でしたが、地面が凍結しているため、まだ開始できないとの連絡が入りました。こういった自然条件の厳しさもこのプロジェクトの特徴です。結果的には3月20日に活動がスタートされました。地面の凍結は解消されましたが、立っているのもやっとの強風吹きすさぶ中での作業です。厳しい環境ではありますが、参加者らはふるさとのためにと懸命に作業に取り組みました。02 年にジランタイ村で最初に植林活動を始めてから8年が経ちました。満を持しての活動に、周囲からの期待が高まっています。